【広報ニュース】平成27年度横浜4支部合同研修会

 平成27年8月27日、「空家等対策の推進に関する行政の対応と土地家屋調査士業務」というテーマで横浜4支部合同研修会が行われました。会場は横浜情報文化センター6階情文ホール(定員239人)でしたが、ほぼ満席の状態で空家等対策特別措置法に対する関心の高さが感じられます。 

 まず、上田尚彦会員(広報部次長・制度対策特別委員・空家等対策特別措置法プロジェクトチーム)による「空家等対策特別措置法及び指針に関して」の講演から始まりました。空家対策を通じてわれわれ土地家屋調査士が社会貢献できればすばらしいことであり、まちづくりの活性化につながればとの話しとともに、空家等対策について土地家屋調査士としての具体的な役割、作業工程及び内容などの説明も聞くことができました。また、国土交通省と総務省の指針の中で土地家屋調査士が明記されていることもあり、今後われわれの専門的知識や業務が空家等対策に関わる重要な役割をもっていることも感じられました。

 次に、庄司博之神奈川県県土整備局建築住宅部住宅計画課長による「神奈川県の空家の状況および県の今後の方針」についての講演でした。神奈川県の空家率は、平成25年においては11.2%(全国は13.5%)であり、10戸に1戸は空家となっていることに驚きました。「空いていること」が問題なのではなく、「管理が不十分なこと」が問題であるとの説明もありました。今後は空家の実態を把握し、さらに行政実務を円滑に行えるような対応・対策を行いたいという意思が感じられました。

 続いて、鈴木和宏横浜市建築局企画部企画課長から「横浜市における空家等対策について」についての講演でした。まず、平成27年7月23日に横浜市と神奈川県土地家屋調査士会が「空家等対策に関する協定」を締結したことに感謝の意を述べられました。横浜市における空家率は平成25年においては10.09%です。横浜市は全国に比べ空家率は低いが、平成20年からの空家増加率が11.02%(全国は8.2%)と増加率が高い傾向にあり、空家が増えている点も大きな問題であるとの説明がありました。

 最後に、吉原綾子横浜市建築局建築安全課建築安全担当係長より「空家等の事例」ということで、横浜市内における実際の空家等の写真を見せていただきました。空家等の調査においては、建物の各部位(屋根、軒裏、基礎等)がどういう状態(ヒビ、破損、傾き等)にあるのかを調べ、さらに塀、擁壁、構築物、雑草、樹木等の状態も同時に調べるとのことです。事例の中には今にも倒壊してしまいそうな建物やブロック塀もありました。空家の問題は空家の存在する場所だけに止まらず、隣接地に住んでいる人たちや周辺を通行する人たちにも危険がおよび、人の命にも関わってくるものだと恐怖さえ感じました。横浜市では危険な状態にある場合や周辺に悪影響がある場合などは所有者へ警告し、応急処置として注意看板の設置等を行っているとのことです。

 また、神奈川県の庄司課長と横浜市の鈴木課長も話されていたのが、空家は比較的未登記建物が多く、所有者の特定が難しかったが、他部署も固定資産税課税情報の利用ができるようになり、その点はかなり容易になったということです。

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 空家となる要因は様々ですが、高齢化、人口の減少、相続人不明等によるものが考えられます。傾斜地に建築された建物を購入したものの、高齢となり家にたどり着くまでの体力がなくなり、駅前にマンションを購入して空家になってしまったとの話もありました。空家予備軍も増加傾向にあり、今後も空家は増加すると考えられるため、早急に対応、対策が必要であります。再利用可能な空家は学生用のシェアハウスや空家バンクなどで定住対策を行っている市町村もあります。倒壊の危険があるような特定空家に対しては撤去作業も実施しています。再利用して賃貸するような場合でも取壊し等を行う場合でもその範囲を特定し、当事者の利害関係を調整することは必要です。調査だけではなく、このような業務においても土地家屋調査士として空家等対策の重要な役割を果たせることは間違いないと思います。また、今後行政機関などともさらに協力し合い、空家等の問題を円滑かつ適切に対策できる体制がとれるように活動しなくてはならないと感じました。

(記事 広報部理事 島村 正明) (写真 横浜中支部広報員 川又 康司)

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