藤沢工科高校出前授業「土地家屋調査士が危ない、後継者を育成しよう」

 近年、土地家屋調査士試験の受験者数が年々減少傾向にあり、昨年は約五千人ほどであった。このまま減少が続けば、それこそ国家資格の剥奪にもつながりかねないように思える。

 土地家屋調査士は測量技術並びに法律の知識を兼ね備えた文理融合のジェネラリストであり、他に類をみない誇り高き資格である。にも拘らず社会的知名度の低さからか測量士と間違えられる始末。私は独立開業して今年で13年目になりますが、当時と比較して知名度が上昇している実感はない。であれば社会に出る前の若者たちに我々の資格を知ってもらおうではないか。毎年コツコツと行えば、何年か後には何百人もの生徒たちにこの資格を知ってもらうことになる。そして将来彼らにも土地家屋調査士を目指してもらえたら受験者数もアップするのではないかと思う。そんな志で出前授業を行った。

 2月の初旬の話、藤沢工科高校の先生から「昨年の出前授業有難うございました。急な話ですが、2月26日にもう一度出前授業をお願い出来ませんか?」と突然の依頼があった。昨年7月に一度やっているので何とかなると思い二つ返事で了承した。

 前回は校庭の中庭に金属鋲を設置して面積測量の実習を行ったので、今回はその鋲を利用して閉合トラバースの測量実習をやることにした。工業高校では毎年ものづくりコンテストという高校生が技術を競う全国大会が行われている。建設系の競技種目は閉合トラバース測量と計算で、昨年の藤沢工科高校の成績は地区で最下位に終わっている。(昨年私が技術指導をしたにもかかわらず)この時期に実習を通じて彼らに教えることが出来れば一石二鳥であるからだ。

 2月26日当日、絶好の測量日和であった。ただとても寒く鼻水を垂らしながらの授業が始まった。2年生37名、9班に別れてトータルステーションの設置から始めたが、いかんせん進まない。予定では最初の1時間目は観測(対回3点トラバース)、2時間目は計算で閉合差と閉合比までの予定であるがとても怪しい。終わってみれば2時間使っても観測が終わらなかった。時間割を立てる際、自分の作業時計により計画を立てたため、器械もろくに使ったことが無い生徒には少し厳しい測量実習となってしまった。中途半端かと思いましたが、仕方が無いので計算過程は省略して、3時間目の座学を行った。  土地家屋調査士と測量士の違いについて話をし、管轄する省庁の違いから測量の目的や客体が異なることや、資格の取得方法の違いなどを説明した。

 また学校では様々な資格取得を推奨しており、土木施工管理技師や溶接技能者などのほか測量士補も受験しているようだ。よって社会に出たときに資格はどれ程貴重なのか、そして資格者がいなければどこの会社も免許無しでは業務が出来ないことなど資格があるだけで世間の人たちからリスペクトされることを説明した。  座学の後半は給料の仕組み。支給総額がそのまま手取りでもらえないことや、天引きされる税金や保険料が国を支えていることを政府に成り代わって説明した。

 質疑応答の時間、調査士に関する質問はなかったが、「給料はいくらもらってますか?」とか「車は何乗ってますか?」の質問に対し、自分なり生徒に夢のもてるような回答をして授業が終了した。

最後に  このような活動がどのように実を結ぶかわかりませんが、昨年行った湘南第一支部の出前授業から土地家屋調査士を希望する生徒2名が生まれ、調査士事務所に就職が決まりました。  これからも出前授業をはじめ、ものづくりコンテストの技術指導や調査士試験に直結する測量士補受験生の講師として協力をしていくつもりです。数年後、「おかげさまで調査士試験に合格しました!」の言葉が私の報酬です。

湘南第一支部 副支部長 石垣 博

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