平成24年2月20日(月)13時より横浜市市民文化会館関内ホールにて、第3回会員一般研修会が行われました。今回は「東日本大震災より学ぶ」という大テーマのもと、一般の方にも聴講できる公開講座として開催し、三部構成で各講師の方に講演をしていだだきました。
始めに第一部の講演では、講師の宮城県土地家屋調査士会の鈴木修会長より、東日本大震災の被災者一個人としての体験談ともに、会を預かる責任者としての対応と震災後に考えたことなどを、お話して頂きました。
大地震の起きたその時から、ご自身が経験されたことと、震災後すぐに立ち上げた宮城会の震災対策本部が行った会員の安否確認作業、支援受け入れと被災者への支援物資運搬作業などについて、時間の経過を追って話されました。
被災地では、災害発生直後は、水と食糧が必要であり、それらを運搬するための車のガソリンも重要であること、まず生きるための1週間、1ケ月、そして半年後と、必要とするものが変化していき、被災者の精神状態も変化していくこと、仮設住宅に住めるようになってからも、将来の希望が見いだせない人たちには非常なつらさがあり、精神的な励ましも必要としていることなどを伺いました。
それから、支援する側へのお願いとして、支援物資に使用条件をつけないで欲しいこと、水や食料品以外は贅沢だと言う考えをもたないで欲しいこと、一部だけを見て、被災者への支援はもう必要ないと判断しないで欲しいことなどを話されました。
また、土地家屋調査士会だけで対策本部をたてるのではなく、緊急時に組織の枠などにこだわらず、公嘱協会、政治連盟等の組織と共同で活動するべきだと、提案されていました。組織の長に必要なのは、即決即行であり、行為の妥当性や平等性などにこだわらずに、目の前の被災者のために動くことであるとも話されました。
鈴木修会長から「被災地責任」という言葉がでましたが、まさに被災者でしか解からないことを伝えて下さったことに感謝すると同時に、神奈川県で仕事をし、生活をする私たちに、折角いただいたアドバイスと教訓を是非生かして行きたいと強く思わされました。
第2部では、神奈川大学工学部建築学科教授の荏本孝久氏を講師にお迎えして、「大規模災害に備える防災・減災まちづくり」のテーマで講演していただきました。
荏本氏は、防災・減災害対策の視点をいくつも挙げて問題提起をしてくださいました。まず、地震のメカニズムを理解した上で、直下型か海溝型か、強震動型か津波型か、都市型か農漁村型かなどの地震の態様を認識して、被害の種類と規模を想定し、液状化の可能性をも考慮した上で、必要な防災対策をとることが大切であると話されました。
日本列島は、巨大地震の発生しやすいプレートのぶつかり合うところに位置しているので、地震の発生メカニズムをさらに研究し、国と地方自治体と地域民が防災情報を共有化して、減災を目指していくことを主張されていました。行政が行うハード面と地域が行うソフト面、原則自助から共助、そして公助の順序を意識して、災害に対する想定と事前準備をすること、ボランティアの受け入れ態勢を作ることも重要だと説明されました。
第3部では、アイサンテクノロジー株式会社の技術顧問である中根勝見氏に、「測地成果2011と境界復元」というテーマで講演して頂きました。
中根氏は、測量で得られた位置は、3Dから、時間軸を合わせて4Dで管理する時代であることを強調されました。
地積測量図においても、不動産登記規則第77条の改正で、測量年月日の記載を求めるようになったのも、その一環ではないかと説明されました。
かつては、スタティック測地系で考えてきましたが、阪神淡路大地震による地殻変動が原因で、土地の境界が視認できる程に移動することを経験しました。
また、年々少しずつ移動する地殻も、長い時間の経過とともに大きな歪みを生じてしまいます。電子基準点の観測で得られるその差異をもとに、国土地理院が変換パラメータを作成して、基準点座標等を補正しました。これが、PatchJGDによる公共基準点の座標と標高の補正ということだそうです。
ただし、不均等な移動や、液状化した海岸部地域などでは、誤差の問題があり、自分でPatchJGDを使用するには、注意する必要があると解説してくださいました。
記者もこれからは、元期を2011年4月とする測地成果2011等を使用して測量計算を行うのかと認識を新たにいたしました。
今回の一般研修会出席者数は、会員260名と補助者16名とやや少なめでしたが、官公署23名、他会会員27名、一般83名の方が見えて、震災から1年という時期でもあり、関心のあるテーマであったかと思われます。
今回の講演をしてくださった講師の方々、並びにその準備をしてくださった皆様に感謝を申し上げます。
記事 川崎支部 林 健二
写真 湘南第二支部 西野 稔
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