日本列島が猛暑に包まれる令和6年7月末日、静岡県土地家屋調査士会(静岡会)が主催する「第11回しずおか境界シンポジウム」に参加しました。見事な企画でしたので、この場を借りて御紹介させていただきます。
静岡会では「境界シンポジウム」を2年に1度の頻度で、開催しているとのことです。また、この「境界シンポジウム」と連携し、「境界問題連絡協議会」を組織し、定期的に境界問題に関する協議会を県や市・町職員と開催しているとのことで、「土地の境界」に関する問題提起を積極的に外部に発信し、行政(県・市・町)や一般市民を巻き込む取り組みを行っているようです。
さて、今回の「しずおか境界シンポジウム」の内容ですが、「持続可能な社会と境界の役割」と題し、法務省、財務省、国土交通省の幹部職員を招きパネルディスカッション形式で行われました。
初めに、コーディネーターの案内に基づき、コメンテーターとして参加した弁護士から、境界(筆界・所有権界・公物管理会等)に関する認識を共有する話がなされました。
続いて、各省が取り組んでいる最新の施策(境界に係わる)が説明されます。
法務省からは民事局民事二課長の説明、財務省からは理財局国有財産業務課長の説明、国土交通省からは政策統括官付地理空間情報課長からの説明がなされました。
概要を簡単に紹介すると、法務省からは、民法の改正にともなう筆界の取扱いに関する変化について、所有者不明土地に係わる諸問題への対応策等について語られ、財務省からは国有財産との境界確定手続きの改正等についての話があり、国土交通省からは地籍調査の意義や役所(市・町)担当者への活用方法の案内、及び境界に関するオープンデータの取り組み等の説明がありました。
今回の参加者は土地家屋調査士、一般の市民、静岡県内の県・市・町の職員となりますが、特に県・市・町の職員にとっては興味深い内容であったのではと思います。
さて、今回の「しずおか境界シンポジウム」の特徴ですが、各省の説明に加え、しっかりしたコーディネーターの導きにより、各省独自の話を聞いた上で、それら複数の施策が、相互に影響し最終的にどんな結果が期待できるのかを検証できる可能性のある企画であったということです。
勿論、今回は壇上で激しい議論が交わされるということはなく、整然とした進行がなされましたが、これまでのシンポジウムとはひと味違う趣のある企画であったとの感想です。
また、今回、複数の省庁の異なる担当者が境界という1つのテーマを語るため、東京ではなく、地方都市の静岡に集まったことも意義があったと思います。
今回の静岡会の取り組みを先例として、全国各地で類似の企画がなされることを期待したいと思います。
なお、神奈川県土地家屋調査士会においては、本年11月に初めて、境界問題連絡協議会を開催し、神奈川県内の県・市・町・村の職員とともに「土地の境界」について課題や問題点を共有し議論する企画がなされる予定であると聞きました。
大いに期待したいと思います。
(記事 名誉会長 鈴木 貴志)
(写真 静岡会様よりご提供いただきました。)