【広報ニュース】第36期関東ブロック協議会 平成27年度土地家屋調査士新人研修会

 今年度も土地家屋調査士新人研修会が9月19日(土)から21日(月・祝)までの3日間にわたり、幕張国際研修センター(千葉市美浜区)において開催されました。この研修会は、登録後1年以内の会員及び新人研修未修了の会員を主な対象とし、日本土地家屋調査士会連合会(日調連)の委託を受けて、関東ブロック協議会(関ブロ)が実施するものです。なお、実際の運営には、関ブロに所属する11の土地家屋調査士会から1名ずつ選ばれた委員によって構成される研修委員会があたります。

 このような新人研修会は、各ブロック協議会においても同様に実施されますが、関ブロが実施する新人研修会の受講者数は他より突出しており、今年度は150名を超える受講者のほか、聴講者を合わせると160名以上の参加者を迎えました。そのうち、神奈川会からは40名(本年度新人21名、過年度未修了者19名)が参加しましたが、全員無事に修了できたことを報告します。  例年は20名程度の参加でしたが、過年度未修了者の受講がこれだけ多かったのは、岩倉会長のこれまでにない強い意向を受けた佐々木研修部長による指揮の下、出席回答のなかった対象者にひとりひとり対応した研修部理事たちの情熱による賜物でしょう。対応にあたった研修部理事のひとりからは、自分の電話に応じて受講を決心してくれた方々に是非お礼を言いたいと、夜の懇親会場で名簿を片手に座席をめぐりながら声をかけている姿が見られました。  また、登録10年を超えたある受講者からは、通知が届いた時に気にはなったものの、いまさらという思いもあって参加を躊躇していたが、思い切って来てよかった、との声も聞かれました。

 この研修会は、「新人研修会」と称してはいますが、関ブロ内から選りすぐりの人材を講師陣として招き、その講義のボリュームもさることながら、内容的にも密度が濃く、レベルの高いものであり、私たちの専門職能について必要とされる知識と技能が何であるかを総合的に学ぶための貴重な機会ともいえ、関係諸氏のそのような気概と自負の下に、毎年度企画、実施されます。たとえ新人でなくとも、これまでの自身の業務を顧みるにも充分に堪えるだけの実質を備えたものといっても過言ではないでしょう。

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3日間にわたる研修会のプログラムと、それぞれ担当された講師を以下にご紹介します。

≪第1日目≫   1.会員心得、土地家屋調査士の職責と倫理     講師 日本土地家屋調査士会連合会 副会長 加賀谷朋彦 氏   2.筆界確認の実務     講師 日本土地家屋調査士会連合会 業務部理事 柳澤尚幸 氏   3.土地・建物の所有及び利用上の規制関連法     講師 東京土地家屋調査士会 業務部理事 丸山晴広 氏

≪第2日目≫   4.調査・測量実施要領     講師 日本土地家屋調査士会連合会 広報部長 古橋敏彦 氏   5.筆界特定制度と土地家屋調査士会ADR     講師 境界問題相談センター埼玉 センター長 紫藤健一 氏   6.不動産登記法・主要先例・オンライン申請・不動産調査報告書     講師 東京土地家屋調査士会 財務部長 山本憲一 氏   7.報酬の運用     講師 日本土地家屋調査士会連合会 業務統計等検討委員 佐藤猛夫 氏

≪第3日目≫   8.土地家屋調査士業務と法的責任     講師 東京土地家屋調査士会 顧問弁護士 山﨑司平 氏   9.パネルディスカッション     「土地家屋調査士の適正業務と報酬について考える」     コーディネーター 東京土地家屋調査士会 相談役 原田克明 氏     パネリスト 山﨑司平 氏 佐藤猛夫 氏 柳澤尚幸 氏            丸山晴広 氏 堀越義幸 氏

 これらのプログラムは、日調連が定めた「土地家屋調査士新人研修実施要領」に基づき、関ブロの研修委員会が決定しますが、講義の順序は、土地家屋調査士が業務を行うにつき、それを処理する流れに従い、それぞれの段階において修得しておかなければならない事項を踏まえた組み立てとなっています。また、講師の選定も同委員会が行うのが建前ですが、おおよその実態は、前任者が後任者を推薦するが、指名された者は拒否できない、そしていったん講師を務めたら数年間は辞められないというのが慣例というか、いわば暗々裏の“おきて”になっております。幸い(?)にして、この“おきて”が破られたという話は未だかつて聞いたことがありません。  ちなみに、今回の講師陣のうち一番のベテランは、東京会の原田相談役ですが、今年でなんと11回目の登壇となります。なお、神奈川会に所属する講師は、この2年間おりませんが、そろそろ声がかかる可能性も否定できませんので、心当たりのある諸氏は、覚悟しておきましょう。

 この記事を読まれている会員の中には、自分が受講したときは1泊2日の日程だったけどな?と、その当時を思い出している方々もおられるかもしれません。確かに平成21年度までは2日間のプログラムにより実施されていましたが、同年度から今回と同じ幕張の研修施設(当時の名称は、国際能力開発支援センター)で行うことになったのを契機として、プログラムを全面的に見直し、研修内容をより充実させることを図り、翌年度から2泊3日の日程で実施することとされました。  その趣旨は、最終日のパネルディスカッションのテーマにも表れていますが、私たちの業務環境や社会状況の変化への対応を意識した結果でもあります。なお、平成23年度から平成26年度までは、同研修施設がいったん閉鎖されたため、研修会場を東京都内のホールに移しての実施となり、宿泊する受講者には不便を強いましたが、ここは、研修と宿泊、懇親会が同一施設内でまかなえます。 

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 最終日のパネルディスカッションは、どうしても一方通行的になりがちな講義のすべての締めくくりとして、受講者にとって同じ世界に生きる経験豊富な先達の“生の声”や、時には失敗から学んだ“苦い教訓”を届けるべく、3日間のプログラムを策定した際に新たに設けられました。そして、プログラムにはあえて載せていませんが、パネルディスカッションに移る直前に催され、今ではすっかり恒例となってしまった研修委員総出演による寸劇も、パネルディスカッションでの議論のネタを提供するために、同時に始めたもので、今年で6回目となります。寸劇の主役として登場する新人は、少々頼りなく、依頼者や隣地所有者などに振り回されっぱなしですが、パネルディスカッションへの会場の雰囲気を和ませるために、もともと企画されたものなので、そこはご愛嬌ですね。ですが、そのエピソードや登場人物のせりふのあちらこちらに、現実に直面するかもしれない問題点をちりばめてあります。実際にご覧になった方々には、お気づきいただけたでしょうか?

 筆者は、今回は視察者として参加しましたが、平成21年度から平成26年度まで研修委員(平成25年度から平成26年度までは委員長)を務めた経験から、この研修会について、受講者や通常の視察者の立場からはうかがい知ることのできない側面をレポートしようと意気込んで筆を執りました。講師を務める方々には、業務に対するプライドと強い愛着を持ちながら、私たちが市民に信頼され必要とされる専門家(「知識と技術を備えた隣接法律専門職種」と佐藤講師の講義で幾度も力強く唱和されましたね。)であり続けるために、何を、どのように、同じ世界の仲間となった後進に伝えるべきか苦心される姿勢に、いつも頭が下がります。このような使命感を共有して、運営を支える研修委員の方々の尽力にも。しかしながら、これらを語りつくすには余りあることに、今さらながら気づき、もどかしくもあります。

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 今回、これら重厚な講義を快く引き受けられた講師の方々には、敬意と称賛の念を惜しまず、また、秋山委員長(千葉会)や戸所副委員長(群馬会)をはじめとする各会から結集した研修委員の方々には、その労をねぎらうとともに、風邪気味で体調がすぐれなかったにもかかわらず寸劇の主役を立派に務め上げた佐々木委員(神奈川会)と彼をいじり倒してくれたキャストらの渾身の名演技には拍手を送りたいと思います。それから、陰で支える優秀な関ブロ事務局職員の忙殺も、忘れてはいけませんね。これら関係者各位による高い志とパッションが作り上げる関ブロの一大事業が今後も継承されることを祈念しつつ。  カロリーとボリュームたっぷりのフルコースを最後まで堪能し尽くし、見事に研修を修了された受講者の方々も、お疲れ様でした。そして、もし自身の周りにまだ修了していない仲間がいたら、是非にも教えてあげてください。“この研修を受けずして、土地家屋調査士を名乗るのは、絶対に損しているよ!”と。

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(記事・写真 広報担当副会長 佐川 祐介)

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