平成24年9月15日(土曜日)から17日(月曜日・祝日)の3日間に亘って、東京都千代田区一ツ橋の日本教育会館で開催された第33期土地家屋調査士新人研修会の1日目と2日目の2日間を取材しました。この研修会には関東ブロックに属する東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬、静岡、山梨、長野、新潟の各会から新人土地家屋調査士計158名、当神奈川会からは18名の参加がありました。 筆者が参加した10年ほど前の新人研修に比べると内容がとても濃く、すべてを紹介しきれるものではありませんが、簡単に紹介します。
1日目 12:10から18:40まで 1『会員心得、土地家屋調査士の職責と倫理』 講師は日本土地家屋調査士会連合会 常任理事総務部長 加賀谷朋彦氏 近年、筆界特定制度やADRへの代理権が土地家屋調査士に付与されるようになり、紛争性が高い案件を取り扱う可能性が増えたため、職業倫理や守秘義務が重要になっているとの説明でした。 2『筆界確認の実務』 講師は千葉県土地家屋調査士会 業務部長 秋山昌巳氏 公図の成り立ちから境界確認の具体的な手法などについての説明がありました。 3『調査・測量実施要領』 講師は日本土地家屋調査士会連合会 業務部理事 餅田愼治氏 仕事上のトラブルを未然に防ぐため、自身の失敗談、体験談を基に仕事を進める上での留意点、研修や会員相互の交流の大切さについての話がありました。
2日目 9:20から17:00まで 4『土地・建物の所有及び利用上の規制関連法』 講師は東京土地家屋調査士会 総務担当理事 佐々木義徳氏 都市計画法、建築基準法、農地法など非常に駆け足ではありましたが、業務を行う上で知っておいたほうが良い法令の説明がありました。測量業務では最終的に建物を建築することがほとんどです。土地を分割したら「建物が建築できなくなった!」とならないよう浅くても幅広い知識が必要だと改めて認識しました。 5『筆界特定制度と土地家屋調査士会ADR』 講師は境界問題相談センター埼玉 センター長 大谷和夫氏 平成18年1月の不動産登記法改正により新たに制定された筆界特定制度と土地家屋調査士会ADRについての説明が行われました。 6『不動産登記法・主要先例・オンライン申請・不動産調査報告書』 講師は東京土地家屋調査士会 研修委員長 内野篤氏 実際のオンライン申請の画面を基に、オンライン申請の方法、不動産調査報告書の記載方法等の具体的な説明がありました。 7『報酬の運用』 講師は神奈川県土地家屋調査士会 副会長 岩倉弘和氏 事務所運営で必要な経費を基にした報酬額の考え方のほか「将来、家族構成が変化しても生活できるような報酬額にしないと後々立ち行かなくなる」など、見落としがちな点についても説明がありました。
3日目 9:20から14:30まで 8『土地家屋調査士業務と法的責任』 講師は東京土地家屋調査士会 顧問弁護士 山﨑司平氏 9パネルディスカッション「土地家屋調査士の適正業務と報酬について考える」 コーディネーター 原田克明氏 パネリスト 山﨑司平氏、加賀谷朋彦氏、餅田愼治氏、岩倉弘和氏 最後に、筆者はかつて受講した新人研修の講義で印象深く記憶に残っている話があります。それは今回の研修で餅田講師も触れていましたが「人に説明するのに専門用語を使ってはいけません。一般の人は“石(いし:境界杭のこと)”と言われたら道端に転がっている石コロを、“筆(ふで:土地のこと)”と言われたら絵を描く筆を連想するのが当たり前なんですよ。それが正常な感覚なんです。」という話です。筆者は今まで多くの境界立会を経験しましたが、専門用語を用いずに説明することを実践するようになってから立会がずっと楽になりました。例えば「これが境界石です」ではなく「これが境界を示す目印の杭です」とか「〇〇さんの土地は2筆ありますね」ではなく「〇〇さん、ここは一体で使われていますが、図面上は土地が2区画に分かれていますね」と言う具合です。“正確な説明”と“分かり易い説明”は違います。一生懸命説明しても相手が理解してくれなければ意味がありません。趣旨が相手に伝わると、相手もいろいろ話をしてくれます。そして不思議と話が一点に収束していき、自然と結論が導き出されることもあります。 いかがでしょうか。ささやかではありますが、新人諸君へのアドバイスとさせていただきます。
広報部次長 中川 裕久
|