平成21年度第2回新入会員研修会が平成22年2月27日(土)午前9時30分から午後5時まで、平成21年後半に登録された会員を対象に開催された。
午前2科目午後1科目そして2班に分かれてのグループ討論会が最後の締めくくりとした構成は実にハードであり、特に、外部作業中心の調査士にとって、教室に閉じ込められて6時間30分は、机に向かうのに慣れていないだけに、辛いものがあった。
朝から粉糠雨が降りしきり、季節にもない暖かさに面食らいながら14名の新入会員が集まった。雨であっただけに、後ろ髪曳かれることなく講義に身を入れる覚悟ができているように見受けられた。
29歳から68歳まで、二世会員も多く、公務員を卒業された方、住宅建築関係の方、実にバラエティに富んだ組み合わせであった。補助者として勤務されておられた方も多く、実務経験豊富のようであった。
例年と異なり、事前にテキストを送付し、受講する内容を一通りチェックする指示が出されていたが、日頃より忙しくしているせいか、予習してきた方は皆無のようにみえた。
佐川研修部長の開会の挨拶に続き役員紹介、新入会員紹介と和やかな内に、引き続き「土地家屋調査士倫理規程」の講義がはじまった。使命、公正、研鑽の綱領を掲げるだけでは社会の要請に応えられなくなった現実を紹介しつつ、我々土地家屋調査士の使命について判り易く説明がなされた。道徳と倫理と法律の狭間で、独占的に認められている業務をどう処理し、いかに社会的貢献をしていくか。必要とされ、信頼されている現実を厳しく認識せざるを得まいと肝に銘じる日でもあった。
専門家としての責任について、二面性があり、一方は応対能力(レスポンスビリティ)であり、他方が説明責任(アカウンタビリティ)である。現在は後者がより強く要求されるようになってきたという。
職務上請求用紙の取り扱いについて、名義貸しについて、包括的業務の依頼、報酬額、費用の基準の明確化、事件記録の保管等について、その及ぼす影響の大なることを警鐘し、トラブルに巻き込まれないように喚起した。
10分の休憩の後、鈴木副会長による「事故の予防と対策について」調査士法に違反し、懲戒処分もしくは、注意勧告した事例を中心に説明をおこなった。
例えば、他人の私道に無断で入り、測量用の鋲を打ち込んだ例、分筆登記の申請人に相続が発生しているのにも拘わらず不動産調査報告書に不実記載をした例、融資が受けられない違反建築建物を偽って表示登記申請した例、職印を3本作成し名義貸しをしていた例、補助者任せにしていた例、分筆登記申請時境界標を偽った例、等々。
更に、登記相談における会員に対する苦情事例を参考に説明をおこなった。
立会いにおける苦情、例えば、説明が足りない、態度が悪い、公平でない、連絡が悪い、了解無く境界標を設置した、また、費用が高すぎる。等々。
午前の部終了後、関連団体の紹介として公嘱協会越智理事長、政治連盟甘利幹事長による、勧奨説明がなされた。UR、郵政公社による受注も厳しい現実となりつつあること。
測量士と土地家屋調査士の違いをいまこそ明確にすべきと訴える甘利幹事長に熱いものを感じ取った次第。
1時間の休憩の後「業務からみた報酬の考え方」について餅田業務部長による講義が再開された。分筆の事例を提示して業務を細分化して、積算内容について説明を行った。
新人会員に分筆事例を事前に通知しておいたので、各人も興味深く聞き入っていた。
各人それ程の差もなく、適正な価格を把握しているようだった。中には、これこそ聞きたかったと目を凝らす者もいた。
休憩を挟んで、2班に別れグループ討論をおこなった。開始する前に、最初に講義を受けた倫理規程に関する小テスト(穴埋め20問)を行い、全員で回答しあった。再確認が出来、効果があったと思われる。
疑問、相談では、専門的な質問(木造・陸屋根ってあり?)が出されたが、大方は、「立会いについて」に集中した。一つ、本人確認の方法、一つ、隣接者の旅費等の請求について、 一つ、他の調査士の隣接地測量に協力せよという倫理規程について、その件に関連して依頼者の守秘義務は、等々。
登記申請を主にしているのに変わりはないが、その要請が筆界の確認に関連してトラブルを防ぐ意味からも、立会い業務が重要になってきた。新たな展開である。立会い業務についても法整備をしっかりして欲しい旨の要望が強かった。
なかなかに己をしっかり見据えた頼もしい新入会員でありました。
研修部次長 平野 稔