「筆界特定制度の現状と筆界確定訴訟」と題して、浦和コルソにおいて11月10日に公開講座が開催され受講してまいりました。平成18年1月20日より筆界特定制度の運用が開始され、来年1月には満4年となります。
髙栁埼玉会業務部長は開会の挨拶の中で、さいたま地方法務局管内の筆界特定申請件数の年毎の増加に伴い、一般市民の方への同制度の更なる利活用の広報の一環として、本講座を開催した趣旨が述べられました。
続いて宮田会長からは今回が6回目の公開講座であり、一般市民や行政機関、また法務局職員や他会関係者に定着した有意義なものとなっているとの挨拶がありました。
私は本企画が、今回のテーマのように変化しつつある現在の土地家屋調査士の職能について、公開講座を通しての広報活動にもなっていると、広報部長の立場として感じました。
第1部は「弁護士からみた筆界特定制度」と題し、日本土地家屋調査士会連合会の清水規廣顧問弁護士による1時間余りの講座でした。
筆界特定制度の筆(境)界確定訴訟よりも良い点として、裁判所からの訴状より法務局からの書面の方が、相手方の抵抗感が少ないことや、手続きの費用が比較的安価であることなどが比較説明されました。
また裁判では、原告側あるいは被告側の一方的資料や図面など、偏った資料収集になり限界があるが、筆界特定制度では法務局に於いて広範囲に資料収集することや、特定測量では双方の土地に立ち入ることで、お互いの全体を把握した図面などが作成できる点が良い点ではないかとのことでした。
標準処理期間についても裁判より、短期間である点も高い評価を受けていました。
今後の課題としては、不明筆界の解消を筆界特定制度と地図整備事業との連携の中で、模索する必要があるのではないか?とのお話でした。
全体的に市民目線でのお話であったように感じました。
第2部は、さいたま地裁の第6民事部、野口宣大判事を講師に「筆界特定制度と筆界確定訴訟」と題して、裁判を通した相違点についての講義がありました。
民事のルールとしての処分権主義、弁論主義そして説明責任と、その結果として拘束される事実認定を話され、筆界確定訴訟の特殊性について、一般民事訴訟との相違点を民事のルールの中で解説されました。
所有権確認訴訟では相対効であるのに対し、ここでは放棄や認諾が無く必ず判決しなければならず、その絶対効は筆界に反映されることとなり、これが形式的形成訴訟との所以でもあります。
これについては申請により登記にも反映されることになります。また20年度の全国の筆界確定訴訟は196件で平均審理期間(取下、却下、和解を含む)は17.1ヶ月とのことでした。
なお、平成17年より、裁判所では「筆界確定訴訟」という表現を採用しているそうですが、提出される書面の多くは「境界確定訴訟」という表現が使用されているとのことでした。なお、その表現でも受理されるそうです。
筆界特定制度が運用されて、結果として筆界確定訴訟の減少が見られる中、裁判と相違し当事者のみの証拠収集資料に拠らず、また処理期間も短い同制度の利活用の広報も必要ではないか、との提起がありました。
会場の隣では、埼玉会会員による写真展も同時に開催されておりました。関東ブロックからも数多くの受講者が訪れており、先日のADR担当者会同でご一緒した方ともお話する機会ができ楽しい時間でした。
今回の講座は、制度実施関係者による上からの、市民や会員へ向けてのベクトルであると思いました。
前記のADR担当者会同では「紛争を捉える視点と整理・コミュニュケーション能力を学ぶ」というテーマで、ロールプレイを中心に実務者の内側から相談者(市民)への、どちらかといえば下からのベクトルでなかったかと思います。
いずれの講座や研修の捉える方向も大変興味深く必要不可欠であります。今後も同様な企画について当会でも実施したいとの感想を持ちました。
埼玉会の皆様ありがとうございました。
取材 広報部長 藤野 寛