公開講座「境界問題解決制度を考える」

 平成22年3月9日、神奈川県立音楽堂にて「境界問題解決制度を考える」をテーマに公開講座が開催された。


 第一部前半は「土地境界問題と調査士型ADR」について、九州大学大学院法学研究院教授 レビン小林久子氏に講義をしていただいた。今、日本ではADRを巡り混乱が生じていることと、その解決について熱心に説かれた。ADRは、紛争当事者が本音で話し合い自己解決をすることを目的としている。調停人はあくまでも、話し合いの進行係であり、証拠に基づいて判断することはない。しかし、実際には、紛争当事者が調停人に判断を求め、調停人も仲裁をしてしまう。当事者の意見は、不要となり、おさまらない感情が残る。そのようにならないように、裁判との差別化(思想の違い)を明確にし、ADR本来の目的である「紛争当事者の自己解決」を促がすことが大事、との事。ADRが抱える課題を再考した。



 第一部後半は、「境界問題解決制度を考える」と題して、座談会が行われた。海野会長が進行役となり、レビン小林久子氏(九州大学大学院法学研究院教授)、西本孔昭氏(日本土地家屋調査士会連合会名誉会長)、奥田一高氏(神奈川県土地家屋調査士会副会長 境界問題相談センターかながわ運営委員長)、柳川猛昌氏(弁護士 境界問題相談センターかながわ運営委員)をパネリストとして迎え、論議が交わされた。境界問題が生じるきっかけや影響について、例を挙げて説明があり、裁判、筆界特定、ADRの検討がされた。奥田一高氏より、境界問題相談センターかながわ(ADR)について、一般者向けに分かりやすい説明もされた。

 第二部は、「筆界特定制度の現状と展望」について、元東京法務局長 寶金敏明氏に講義をしていただいた。境界問題を解決する制度の一つである筆界特定制度について、一般者に分かりやすく説明がされた後、民事局要綱案(筆界確定制度)と、実際に施行された筆界特定制度を比較検討された。私は、筆界確定制度(民事局要綱案)が出来ると聞いた時には大いに期待したが、平成18年に施行された筆界特定制度には少なからずガッカリした。寶金氏は、今の筆界特定制度の問題点を例を挙げて説明し、そのような場合でも、他の法律を使えば問題点を解決できる場合があることを説かれた。また、土地家屋調査士に、筆界特定制度に対する心得を指導された。「境界のお医者さんたる土地家屋調査士は、筆界特定こそ大手術の場と心得るべき」と。私には、土地家屋調査士への叱咤激励に聞こえた。



 公開講座と同時に、土地家屋調査士・弁護士による境界問題無料相談会も開催された。3区画のブースが設けられ、朝10時の開始時には既に1つのブースでは相談が始まっていた。10分後には全てのブースが相談者でうまり、2時間後に相談会は盛況のうちに幕を閉じた。

(取材・撮影)
横浜中支部広報員 小林 雅裕
横浜南支部広報員 荒川 原乗
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